UXデザイナー(3年目)が多摩美統合デザイン学科の「成果展」を見て考えたこと

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多摩美術大学統合デザイン学科の成果展「INTEGRATING」が3月11日〜13日に開催されたので、初日にお邪魔してきました。きっかけはたしか中村勇吾さんのツイート。横浜まで足を伸ばして、とても良い刺激を得られた1日でした。

統合デザイン学科とは

統合デザイン学科は2014年4月に新設された学科です。学科長はプロダクトデザイナーの深澤直人氏、教授陣には中村勇吾氏永井一史氏佐野研二郎氏などデザイン界、広告界の大物が名を連ねます。そして非常勤含む講師陣には菅俊一氏小杉幸一氏菅付雅信氏鈴木元氏奥田透也氏深津貴之氏(これでも一部)と泣く子も黙るスタープレイヤー揃い。2003年のダイエーホークスばりです。井口、松中、城島、バルデス、ズレータです。

何をやるのか

統合デザイン学科の学科サイトにはこのような記載があります。

「体の延長としてのものや空間、その集合体としての環境、そしてそのそれぞれを繋ぎ合せる媒介としてのシステムとコミュニケーション、画像や映像や身体のインタラクション、それらが途切れることなく一貫性を持って統合されたデザインは、それ自体が美学として、生活や社会や産業をより良い方向に導く原動力となります。」

共感に次ぐ共感。よく一般的に「デザイン」として解釈されがちな最終的なアウトプット力だけでなく、環境や社会を捉える着眼力やデザインすべきポイントを探る分析力まで育てる方針であることがこの一文から伝わります。そしてアウトプットもグラフィック、プロダクト、映像など媒体を限定せず、コミュニケーションを一貫してデザインする、と。この文章を読むだけでも、とても魅力的(つまり入学したい)です。

成果展について

今回拝見した展示「INTEGRATING」は統合デザイン学科1期生(現在3年生)の課題展でした。そして、展示期間中に学生と講師のトークイベントも開催されました。トークイベントと展示内容、印象的だったことを簡単にまとめます。

講師&学生トークイベント

トークショーは[講師 × 学生]のディスカッション形式で開催されました。ぼくがお邪魔したのはTHE GUILD深津貴之氏とalumicanこと奥田透也氏が登壇された回。お二人の共通点は以前tha ltd.(代表は教授を務める中村勇吾氏)で働かれていたこと。講師の依頼も中村氏経由だったとのことで、講師にスタープレイヤーが揃っているところも納得です。

トークショーで講師陣が考えていることや学生の体験を聞いて感じたのは、統合デザイン学科は「美大っぽくない」ということ。それが感じられたのは担当授業の話からでした。奥田氏は1、2年生の授業を担当されているそうです。1年生には「インターフェイス」、2年生には「インタラクション」。この2つの授業がとても興味深いものでした。

インターフェース

1年生の「インターフェース」は、いわゆる【画面】を意味するものではなくて、言葉の意味そのまま【接点】に関する授業とのことでした。

社会環境と人間の関わり方、サービスとユーザーの接点。アイデアやアウトプットの前に、これらをどう捉えるかが重要である。という考えで、物事の見方や社会の捉え方を学ぶ授業とのこと。

「ものづくり」が好きで美大に入った学生からしたら面白くないかもしれませんが、これはとても本質的だと思いました。

実際に現場で必死こいてると「手を動かし始める前に、勝負は大方決まっている」と感じることがよくあります。それくらい前段の設計は重要で、例えば利用者がいるものであれば「だれが」「いつ」「どこで」「どういうシチュエーションで」「何のために」使うものを作るのか。そもそも「必要なのか」を考えるフェーズ。そして土台となるコンセプトメイクまでが超重要。ぼくの仕事(UX/UIデザイン)でいうと、リサーチ、要件定義、体験設計あたりでしょうか。これらが学校で学べるのも、実際に現場の第一線で活躍されている講師陣だからこそなのかなと思いました。

この授業を受けるとおそらく社会の見え方が変わってくると思うので、それを大学1年生に経験できるのは羨ましい限りだなと思いました。

インタラクション

インタラクションという言葉は「双方向性」や「対話」と解釈されることが多いですが、2年生では物事との関わり方と学んでいくとのことでした。例として挙げていただいたのは「めくって驚くものをつくる」という課題。これもまたものづくりの前段にある戦略的な思考が鍛えられますよね。アウトプットはもちろん、視点や発想がものをいう課題ですね。

授業の話を聞いていると、実際にどのような課題があり、どのような作品を作り、どのようなフィードバックを受けているのか、めちゃくちゃ気になりますよね。最初に書きましたがこの展示自体は課題展なので、まさに視点や発想を試される課題に対して学生がアウトプットしたものが展示されていました。

展示

日本酒のコンセプトと、それを体現するパッケージまで制作する課題。実際にお店に並んでいてもおかしくないようなものばかりでした。

日本酒のコンセプトと、それを体現するパッケージまで制作する課題。実際にお店に並んでいてもおかしくないようなものばかりでした。

「安心」をデザインする、という課題。「安心」をどの角度から捉えるかという課題であり、それはイコール「何に不安を感じているか」ということだと思いました。充電という結果に行き着いたのも現代っぽい!

「安心」をデザインする、という課題。「安心」をどの角度から捉えるかという課題であり、それはイコール「何に不安を感じているか」ということだと思いました。充電という結果に行き着いたのも現代っぽい!

「安心」をデザインする課題のプロトタイプ。プロダクトデザインのことはわかりませんが、おそらく試作を重ねて行き着いた形なんだろうなーと。

「安心」をデザインする課題のプロトタイプ。プロダクトデザインのことはわかりませんが、おそらく試作を重ねて行き着いた形なんだろうなと感じるコンパクトな構造。

森永乳業のアイスクリーム「ピノ」をリブランディングする課題。マーケティングコミュニケーション的な考え方からコンセプト立案、パッケージデザイン、ビジュアルの制作まで。個人的にめっちゃ面白そうだなと感じた課題でした。

森永乳業のアイスクリーム「ピノ」をリブランディングする課題。マーケティングコミュニケーション的な考え方からコンセプト立案、パッケージデザイン、ビジュアルの制作まで。個人的にめっちゃ面白そうだなと感じた課題。

再定義した「ピノ」ブランドに立脚したビジュアル。大学生の課題でこんなの作れるんですか…。焦

再定義した「ピノ」ブランドに立脚したビジュアル。大学生の課題でこんなの作れるんですか…。焦

これはTwitterで話題になってましたね。手前に置いてあるコップの水と奥の鏡に反射しているコップの水の色がなぜか違う…という作品です。ぼくみたいな凡人には仕組みは全くわからず。作者の方、ぜひ種明かししてください。。

これはTwitterで話題になってましたね。手前に置いてあるコップの水と奥の鏡に反射しているコップの水の色がなぜか違う…という作品です。ぼくみたいな凡人には仕組みは全くわからず。作者の方、ぜひ種明かししてください。。

感想+ちなみに

統合デザイン学科はこれまでイメージしていた美大のイメージを良い意味で裏切る、とても実践的な学びの場だなと思いました。そして学生さんは美大生である時点で絵を描いたり何かを作ったり、形としてアウトプットする技術は持っているので、言わずもがな展示も刺激的で素晴らしいものが多かったです。

ちなみにですが、ぼくは最近「年下の人がやっていることをちゃんと見る」ことを意識的にやっています。これは2つ目的があって、1つは下の世代の視点や思考を知ることです。ぼくもまだ若い世代に括られることが多いんですけど、「学生時代にSNSが当たり前にある」というのは大きな変化だと思っています。ぼくの高校時代(2007〜2010年)はモバゲー、大学時代(2010〜2014年)はmixi全盛、Twitter流行り始めくらいの感じでしたが、やっぱり中高生でLINE、Twitterにどっぷり浸かっていると社会感覚は全然違ってくるはずです。また勉強する環境も変わっているだろうし、教育システムの中で経験してきたことはいざ社会人になったときに大きな影響を与えると思っています。

そしてもう1つの理由は、年下でも自分より優秀な人がたくさんいる事実と向き合うことです。自分と全く別の領域ならそこまで意識しないかもしれませんが、例えばプログラミングを使ったメディア表現は自分の主戦場に近い領域です。それを20歳の学生がアウトプットできて、ぼくができないという事実から目を背けないこと。宣伝会議賞の中高生部門なんかも同じ感覚で見てます。もちろんぼくが彼ら以上にできることはたくさんあるはずですが、そういう話ではなくて、自分が危機感を感じたり、ポジティブに焦るために必要な刺激だと思っています。

というわけで、改めて【デザイン】を考えるとても刺激的な機会になりました。謝謝。


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