オトミセで考える情報設計とLX (リスナー体験) 問題提起編

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私事ですが、5月3日~5日の間さいたまスーパーアリーナで開催されたVIVA LA ROCKに行ってきました。
今回ライブ以外で気になっていたのは「オトミセ」。アマチュアミュージシャンをはじめ、音楽に関する様々な活動をされている方々が音源を配ったり、活動をアピールする某マーケットのような場所です。

今年で2年目となるVIVA LA ROCKですが、オトミセ自体は運営側の導線改善や出展者の皆さまの努力の甲斐もあり、去年より賑わっていたと思います。

無料配布したCDの役割

VIVA LA ROCK終了後、オトミセに関していくつかのツイートが目に留まりました。
それは、オトミセの出展者のアプローチに疑問を呈したもの。

発端はレジ―さん(@regista13)のこの一連のツイート

このツイートに呼応するようにSpincoaster野島さん(@BokuNojiman)からも。

簡潔に言うと、当日その場の展開だけで満足しているのではないか、その後の流れまで考えた上でのコミュニケーションなのか、という疑問でしょう。

今回は音楽の届け方と音楽にまつわる情報の届け方について、UXの観点から書いてみたいと思います。

ライブハウス前でのビラ配りの意味

上記のツイートを見たときに僕は全く別の機会に感じていた音楽に、バンド活動に関わるとあるモヤモヤを思い出しました。
僕は頻繁に小箱に行くのですが、ほぼ100%、終演後ライブハウスの前にバンドマンがフライヤーを持って立っている画を見ます。

音楽を聴いて欲しい、ライブに来てほしいという想いを込めてフライヤーを配ってくれているのはとても分かるのですが、客からしてみればその情報を得る理由がないんですよね。

「お願いします!」、「~でライブします!」など数組からほぼ同じ類の情報を受け、手には似たような情報が乗っている、似たようなフライヤーが何枚も。残酷だけど、どこの誰かも知らないバンドのフライヤーを読むために労力を費やすほど、現代人は情報に飢えていません。

興味があればスマホで簡単に検索できる時代です。

逆に言えば、興味がない情報は受け流される時代と言えます。

音楽を伝えるために必要な”デザイン”

このご時世情報は溢れています。

総務省の統計によると、現代の人々は日々受けている情報の99%以上を受け流している(気づいていない)といいます。

この統計データが意味していることは、しっかり設計しなければ情報は”ノイズ”になる可能性の方がよっぽど高いということ。

これは今に始まった話ではありませんが、情報過多が騒がれる今日、ライブ情報や音源などの何かしらの情報的メッセージを相手に届けたいのであれば、それ相応の設計が必須と言えるでしょう。

このような設計をコミュニケーション・デザインと呼びます。

先の例に挙げたフライヤーも立派なオウンドメディアの一つなので、掲載する情報やビジュアル、配る場所、タイミング、文脈などをしっかり“リスナー目線”で設計することでもっと有益なツールになります。

Listener Experienceと”最終目標”

顧客体験を意味するCX(Customer Experience)、Web上でのユーザ体験を意味するUX(User Experience)があるなら、音楽という様々なチャネルを通じて響く特殊とも言える情報に関しても、体験設計を意味する言葉、概念があってもいいのではないでしょうか。

云わばLX(Listener Experience)です。

音楽リスナーに自分の音楽を、バンド情報を届けるための設計プロセスです。こういうと堅苦しく聞こえますが、”リスナーへの思いやり”と考えると少しはイメージがつくでしょうか。

コミュニケーション設計手法や理論はたくさんありますが、それよりも先ず、このLX(リスナー体験)を考えるときに絶対に欠かせないことがあります。

それは”ゴールの設定”です。

名前を憶えてもらうこと、音楽を聴いてもらうこと、CDを買ってもらうこと、ライブに来てもらうこと。
どれがいい、どれが悪いという話ではなく、ゴールを軸に一連の施策や情報接触を設計することで、リスナーを自分たちが望んだ方向に導くことが可能になります。

名前を憶えてもらうためにすべきことと、後日音源を聴いてもらうためにすべきことでは全く変わってきます。

答えはリスナーに聞け!

この記事はオトミセの問題提起から始まりましたが、どんな方法が正しいか、今この場で答えは出ません。
ただ今回のケースに限らず一つ言えることは、「リスナーを知る」ことが必要であるということです。

今回のオトミセのケースであれば、施策を考える際にゴールに加えて下記のことは考える必要があったでしょう。

    ① 当日のお客さんは誰を観に来たのか (ヘッドライナーや当日のアーティストジャンルから仮定)
    ② お客さんの年齢層 (①を踏まえて)
    ③ お客さんの音楽視聴環境 (①、②を踏まえて)
    ④ お客さんのデジタルリテラシー (①、②を踏まえて)

最低でも上記の”仮定”をしていれば音源を届ける媒体やブースでのアプローチ方法のアイデアの基盤となりますよね。

以上は例えとして出しましたが、リスナーに情報を、音楽を届ける上では最低ボーダーに過ぎません。
何度も言いますが、徹底的にリスナーの立場で考えて、LX(リスナー体験)をデザインすること。が今の時代では必要とされています。

最後に

この類のデザインはとても専門的で、高度なことに思います。

知識が必要なことはもちろんそうですが、設計の過程で時間も労力もかかります。

音楽を作ることが本職のミュージシャンがそこまでやる必要があるのか、という疑問や躊躇いもあることでしょう。

しかし、これまた現実的なことですが、いい音楽を作るだけでは人には届きません。
“いい音楽を作る”というのはミュージシャンである前提で、それを如何に人に届けるか、いい音楽として聴いてもらうか、というところまで設計することが今のアーティスト(スタッフ含む)に求められていることだと思います。

…手前味噌ですが前述した通り、僕はUXを設計する仕事をしています。

まだまだ修行中の身ですが、この記事を読んで少しでも自分の音楽とリスナーの間にある情報の流れを考えたいと思う方は是非是非一緒に勉強しましょう。

今回は「問題提起編」とし、音楽界隈で行われている”一般的”なコミュニケーションに対して疑問を投げかけましたが、次回「実践編」として具体的なUX設計プロセスやシナリオ作成の手法を事例を交えて紹介したいと思います。

コミュニケーションデザインによって音楽体験をデザインすることが、LXをデザインすることが、あなたの音楽のためになると、あなたのリスナーをもっと幸せにすることができると信じています。


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